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叫び続ける認知症の患者さんへの訪問鍼灸マッサージ:コミュニケーションが取れない場合の施術アプローチ

叫び続ける認知症の患者さんへの訪問鍼灸マッサージ:コミュニケーションが取れない場合の施術アプローチ

この記事では、認知症の方への訪問鍼灸マッサージにおける課題と、その解決策について深く掘り下げていきます。特に、コミュニケーションが困難な状況下で、どのように患者さんの心身に寄り添い、より良い施術を提供できるのか、具体的なアプローチと実践的なアドバイスを提示します。

認知症でコミュニケーションが取れない方と接するのに、どうしたら良いか悩んでおります。

終日叫びっぱなしの患者さんに対しマッサージ治療をしていますが、どのように進めていくべきでしょうか。

私は今年の6月から訪問鍼灸マッサージをしています。

担当になった患者さんの一人に終日叫びっぱなしという方がいらっしゃり、質問させていただきました。

その患者さんは特別養護老人ホームに入居してらして、私ともうひとりのスタッフが週2回訪問マッサージ治療を行っています。

ご家族の意思により腕・脚の関節が縮んで固まらないようにしていきたいのですが、ご本人とのコミュニケーションが一切取れないため力加減、関節の運動範囲の限界などを感覚で判断するよりなく、大変悩んでおります。

施術をはじめる前からその患者さんは「あーっ!あーっ!」と声を出し続けており、施術をはじめると目を血走らせ、私の顔を凝視し、よだれを垂れ流し、声を出すごとに全身に力を入れてしまわれます。

時折力を抜いた瞬間に関節運動をしたり手足のさすりほぐしをしていますが、すぐ又力を入れてしまわれます。

刺激がその方にとって快か不快か判断しようにもその刺激の強弱に関係なく声をあげていらっしゃるので、何をしてさしあげたらよいかわからなくなってしまいます。

このような方にどのように施術していけば宜しいのか、もし何か良いアドバイスがあれば教えていただけませんでしょうか。

宜しくお願い致します。

はじめに:コミュニケーションが難しい患者さんへの訪問鍼灸マッサージの挑戦

訪問鍼灸マッサージは、患者さんの自宅や施設に直接出向き、個別のニーズに応じた施術を提供する、非常にやりがいのある仕事です。しかし、認知症の方、特にコミュニケーションが難しい患者さんへの施術は、多くの挑戦を伴います。今回の相談内容は、まさにその難しさを象徴しています。終日叫び続け、意思疎通が困難な患者さんに対し、どのようにして安楽な施術を提供し、ご家族の希望に応えるのか。この問いに対する具体的なアプローチを、以下に詳しく解説していきます。

1. 患者さんの状態を多角的に理解する

まず、患者さんの状態を深く理解することが重要です。単に「叫び声」や「抵抗」という表面的な現象だけでなく、その背景にある原因を探る必要があります。認知症の進行度合い、既往歴、服薬状況、生活環境など、多角的な情報を収集しましょう。ご家族や施設のスタッフとの連携を通じて、以下の情報を把握します。

  • 認知症のタイプと進行度: アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症など、認知症の種類によって症状や対応が異なります。
  • 既往歴と服薬: 痛みや不快感の原因となる疾患がないか、薬の副作用がないかを確認します。
  • 生活環境: 普段の生活リズム、食事、睡眠状況などを把握し、施術時間帯や方法を検討します。
  • 行動のパターン: 叫び声や抵抗が特定の時間帯や状況で起こるのか、何らかのトリガーがあるのかを観察します。

これらの情報を収集することで、患者さんの状態をより深く理解し、適切な施術方法を選択するための基盤を築くことができます。

2. 観察と五感を最大限に活かす

コミュニケーションが取れない場合、視覚、聴覚、触覚などの五感を最大限に活用して、患者さんの状態を把握することが重要です。

  • 視覚: 表情、体の動き、姿勢、皮膚の色などを注意深く観察します。目の動きや顔の表情から、わずかな変化を読み取ります。
  • 聴覚: 叫び声のトーン、大きさ、リズムを観察し、痛みの有無や不快感の程度を推測します。
  • 触覚: 触れたときの筋肉の緊張度合い、皮膚の温度、湿り気などを感じ取ります。
  • 嗅覚: 体臭や周囲の環境から、健康状態や清潔度を推測します。

施術中は、患者さんの反応を注意深く観察し、少しの変化も見逃さないようにしましょう。例えば、関節運動を行う際に、わずかな抵抗や表情の変化があれば、すぐに施術を中断し、患者さんの状態を優先します。

3. 痛みの可能性を考慮したアプローチ

叫び声や抵抗が、痛みに起因している可能性も考慮する必要があります。認知症の患者さんは、痛みを言葉で表現することが難しい場合があります。以下の点を意識して、施術を進めます。

  • 痛みの評価: 痛みの原因となりそうな部位(関節、筋肉など)を触診し、圧痛の有無を確認します。
  • 優しい手技: 強い刺激や急な動きは避け、優しく、ゆっくりとした手技を行います。
  • 体位の工夫: 患者さんが楽な体位になるように、クッションやタオルなどを使用します。
  • 中断と再開: 施術中に患者さんの反応が変化したら、すぐに施術を中断し、状態を観察します。落ち着いたら、再度、ごく短い時間から施術を再開します。

痛みの可能性を考慮し、患者さんの反応を見ながら施術を進めることで、より安全で安楽な施術を提供できます。

4. 施術方法の工夫

コミュニケーションが取れない患者さんへの施術では、従来の施術方法にとらわれず、柔軟な対応が求められます。以下の点を参考に、施術方法を工夫しましょう。

  • 手技の選択: 強い刺激を避けて、さすり、軽擦、ストレッチなど、優しい手技を中心に選択します。
  • 刺激量の調整: 刺激の強さ、時間、範囲を細かく調整し、患者さんの反応を見ながら行います。
  • アロマテラピー: 落ち着く香りのアロマオイル(ラベンダー、カモミールなど)を使用し、リラックス効果を高めます。ただし、香りに敏感な方もいるため、事前に確認が必要です。
  • 音楽療法: 穏やかな音楽を流し、リラックス効果を高めます。
  • 視覚的な工夫: 施術前に、患者さんの好きな写真や絵を見せたり、明るい色のタオルを使用したりして、安心感を与えます。

これらの工夫により、患者さんの不安を軽減し、より快適な施術を提供することができます。

5. ご家族や施設スタッフとの連携

ご家族や施設スタッフとの連携は、患者さんの状態を把握し、適切な施術を提供するために不可欠です。定期的に情報交換を行い、以下の点を共有しましょう。

  • 患者さんの状態の変化: 施術中の反応、体調の変化、行動の変化などを報告します。
  • 施術の効果: 施術後の患者さんの様子、改善点などを共有します。
  • 生活環境の情報: 食事、睡眠、排泄などの情報を共有し、施術に活かします。
  • ご家族の希望: ご家族の希望や不安を聞き、施術に反映させます。

チームで患者さんを支えることで、より質の高いケアを提供し、ご家族の安心感にもつながります。

6. 記録の重要性

施術の効果を評価し、より良いケアを提供するためには、記録が不可欠です。以下の点を記録しましょう。

  • 施術内容: 施術時間、使用した手技、刺激の強さなどを記録します。
  • 患者さんの反応: 表情、体の動き、声のトーン、呼吸の状態などを記録します。
  • バイタルサイン: 血圧、脈拍、体温などを記録します。
  • その他: 施術前後の患者さんの様子、ご家族やスタッフとの情報交換の内容などを記録します。

記録を定期的に見返し、施術方法の改善や、患者さんの状態の変化に対応できるようにしましょう。

7. 倫理的な配慮

認知症の患者さんへの施術では、倫理的な配慮が特に重要です。以下の点を守り、患者さんの尊厳を守りましょう。

  • インフォームドコンセント: ご家族から施術の同意を得るだけでなく、患者さんにも可能な範囲で説明し、理解を得るように努めます。
  • プライバシーの保護: 患者さんの個人情報を厳重に管理し、プライバシーを保護します。
  • 安全の確保: 施術中の安全を確保し、転倒や事故を防ぎます。
  • 虐待の防止: 身体的、精神的な虐待を絶対に行いません。
  • 自己研鑽: 認知症ケアに関する知識や技術を継続的に学び、自己研鑽に努めます。

倫理的な配慮を忘れず、患者さんの人権を尊重したケアを提供しましょう。

8. ストレス管理と自己ケア

コミュニケーションが難しい患者さんへの施術は、精神的な負担が大きくなることがあります。自身のストレスを適切に管理し、心身の健康を保つことも重要です。

  • 休息: 十分な休息を取り、疲労を回復させます。
  • 気分転換: 趣味やリラックスできる活動を行い、気分転換を図ります。
  • 相談: 同僚や上司、専門家などに相談し、悩みを共有します。
  • 自己肯定: 自分の努力を認め、自己肯定感を高めます。

心身の健康を保つことで、質の高いケアを提供し続けることができます。

9. 成功事例の紹介

実際に、コミュニケーションが難しい認知症の患者さんに対して、訪問鍼灸マッサージで改善が見られた事例を紹介します。

事例1: 終日興奮状態だった80代の女性。ご家族からの相談を受け、週2回の訪問マッサージを開始。最初は施術を拒否し、抵抗が強かったが、さすりや軽擦などの優しい手技から始め、徐々に慣れてもらう。アロマテラピー(ラベンダー)を取り入れ、音楽を流すことで、リラックス効果を高めた。3ヶ月後には、興奮状態が落ち着き、穏やかな表情で施術を受けられるようになった。関節の可動域も改善し、ご家族から感謝された。

事例2: 認知症で寝たきりの90代男性。関節拘縮が進行し、痛みのため、夜間に叫び声をあげることが多かった。週1回の訪問マッサージを開始。痛みの原因を特定するため、ご家族や看護師と連携し、痛みの評価を行った。痛みが強い部分には、温熱療法や軽擦を行い、痛みを緩和。体位を工夫し、褥瘡予防にも努めた。2ヶ月後には、夜間の叫び声が減少し、安眠できるようになった。ご家族の負担も軽減された。

これらの事例から、諦めずに、患者さんの状態に合わせたアプローチを続けることで、改善の可能性が見えてくることがわかります。

10. 専門家への相談

今回の相談のように、対応に困るケースに直面した場合は、一人で抱え込まずに、専門家への相談を検討しましょう。認知症ケアの専門家(医師、看護師、理学療法士、作業療法士など)や、経験豊富な訪問鍼灸マッサージ師に相談することで、新たな視点やアドバイスを得ることができます。

専門家への相談は、患者さんへのより良いケアにつながるだけでなく、自身のスキルアップにもつながります。

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まとめ:訪問鍼灸マッサージでできること

認知症でコミュニケーションが難しい患者さんへの訪問鍼灸マッサージは、多くの困難を伴いますが、患者さんのQOL(Quality of Life:生活の質)を向上させるために、非常に重要な役割を果たします。患者さんの状態を多角的に理解し、五感を最大限に活かし、痛みの可能性を考慮した上で、優しい手技やアロマテラピー、音楽療法などを組み合わせることで、患者さんの不安を軽減し、安楽な施術を提供することができます。ご家族や施設スタッフとの連携を密にし、記録をしっかりと残し、倫理的な配慮を忘れずに、自己ケアにも気を配りながら、患者さん一人ひとりに寄り添ったケアを提供していきましょう。諦めずに、患者さんの状態に合わせたアプローチを続けることで、必ず改善の道が開けます。

参考文献

  • 日本東洋医学会: 認知症に対する東洋医学的アプローチ
  • 日本訪問マッサージ協会: 訪問マッサージにおける認知症ケア
  • 厚生労働省: 認知症施策推進総合戦略

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