認知症の母が施設で「できること」を見つけるには？介護のプロが教えるQ&A
認知症の母が施設で「できること」を見つけるには？介護のプロが教えるQ&A
介護施設の入所しているお母様についてのご相談ですね。認知症で要介護3であり、ご自身からの言葉は出にくいものの、人の言うことは理解でき、歩行も可能とのこと。仕事の関係でほとんど施設で過ごされているお母様が、退屈でつまらないと感じているようです。昔から家事と園芸がお好きだったものの、今はレクリエーションにもあまり参加せず、一日ボーっと座っていることが多いとのこと。施設では洗濯物をたたませてくれたりしていたものの、今はうまくできなくなってしまったそうです。
ご自身が一緒に過ごせる時は、料理や掃除を手伝ってもらっていると、お母様はすごく嬉しそうで、その時は顔もしっかりしているとのこと。施設では、座っていてもいつも半分寝ていて、目も死んだように見えるとおっしゃっています。施設ですべてお世話してもらうのは安心ですが、単なる長寿より生活の質を重要視しており、認知症でもできる限り自分のことは自分でし、人の役に立てることを望んでいるとのこと。施設でできることとして、園芸が好きなので、庭の隅にでも何か植えさせてもらえないかとお願いしたものの、断られたそうです。何か良いアイデアはないかと、ご相談されています。
介護施設の入所している母についてご相談です。現在、認知症で要介護３ですが、自分からの言葉は出にくいですが、人の言うことはかなり理解できますし、少しおぼつかないところはありますが、歩行は可能です。私の仕事の関係でほとんど施設で過ごしていますが、退屈でつまらないといいます。母は昔から家事と園芸くらいしか趣味もなく、ＴＶも本も興味ありません。昔は人とよく話したのですが、今は自信がないようで、人から声をかけられたときしか、話しません。レクリエーションにもあまり参加せず、天気の良い日にスタッフの方と10分程度散歩に行く以外、一日ボーと座っていることが多いです。
施設では洗濯物をたたませてくれたりしていたのですが、今はうまくたためなくてしなくなってしまいました。
私が一緒に過ごせるときは、できるだけ母に料理や掃除を手伝ってもらうようにしていますが（と言っても混ぜたり、お皿に取り分けてもらったり、モップでサッとふいてもらうくらいですが）手伝ってもらって、「助かったわ、ありがとう」と言うとすごく嬉しそうで、その時は顔もしっかりしています。
施設にいるときの母は、座っていても、いつも半分寝ていて、目も死んだようです。
施設ですべてお世話してもらって安心ですが、私は自分もそう望んでいるのですが、単なる長寿より、生活の質を重要視しています。認知症でもできる限り、自分のことは自分でし、人の役に立てることは、人が生きて上で一番大切なことだと考えます。
なんでもしてもらうより、少し頑張って自分でできることは自分でしてもらいたいと考えています。それでけがをしても構わないと施設にもお願いしていますが、なかなか難しいようです。スタッフがなんでもやった方が早いですものね。それでも今の施設はできるだけトイレも自分で行かせてくれますし、良い方だと思います。
前置きが長くなりましたが、こんな母でも、施設の中でできるようなことは何かないでしょうか。園芸が好きなので、庭の隅にでも、何か母に植えさせてもらえないかとお願いしたのでが、一人にそんなことはさせられないし、枯れた時ショックを受けるかもしれないと断られました。幼児用パズルでもと考えましたが、すぐパーツをなくしそうだし。何か人の役に立つことが良いと思うのですが、針は持たせるわけにいかないし、もう編み物も無理だし・・・何か良いアイデアを教えて頂ければ有難いです。
今回の記事では、介護施設に入所されているお母様が、認知症であっても、施設での生活をより豊かに、そして「できること」を見つけ、生活の質を向上させるための具体的なアイデアを、メリットとデメリットを比較しながら提案します。介護の専門家としての視点から、お母様の状況に合わせた活動のヒントを提供し、ご家族が抱える悩みに対する解決策を探ります。
1. 認知症の高齢者が施設で「できること」を見つけることの重要性
認知症の高齢者が介護施設で過ごす場合、単に安全に生活できるだけでなく、心身ともに活き活きとした日々を送ることが非常に重要です。これは、生活の質（QOL：Quality of Life）を高め、認知機能の維持や改善にも繋がるからです。
1.1. 生活の質の向上
認知症の高齢者が「できること」を見つけ、積極的に活動に参加することで、自己肯定感が高まり、精神的な満足感が得られます。例えば、かつて得意だった家事や趣味を、できる範囲で続けることは、過去の自分との繋がりを保ち、自己の存在意義を感じることに繋がります。また、他の入居者やスタッフとの交流を通じて、社会的なつながりを維持することも、生活の質を向上させる上で不可欠です。
1.2. 認知機能の維持・改善
認知症の進行を遅らせるためには、脳を活性化させることが重要です。新しいことを学んだり、体を動かしたり、人とコミュニケーションを取ることは、脳への刺激となり、認知機能の維持・改善に役立ちます。例えば、簡単なパズルや手作業、音楽鑑賞や回想法など、様々な活動を通じて、脳を活性化させることができます。
1.3. 身体機能の維持
身体機能を維持することも、認知症の高齢者にとって重要です。適度な運動や身体を動かす活動は、筋力やバランス感覚を保ち、転倒のリスクを減らすことに繋がります。また、身体を動かすことは、気分転換にもなり、心身の健康を促進します。
2. 施設でできる活動のアイデア：メリットとデメリット
お母様の状況に合わせて、施設でできる活動をいくつか提案し、それぞれのメリットとデメリットを比較検討します。これらの活動は、お母様の心身の健康を促進し、生活の質を向上させることを目的としています。
2.1. 園芸活動
お母様が園芸好きとのことですので、園芸活動は非常に良い選択肢です。施設によっては、庭やプランターを用意している場合があります。もし難しい場合は、小さな鉢植えから始めることもできます。
- メリット:
- 自然に触れ合うことで、精神的な安らぎが得られる。
- 土を触ったり、植物の世話をすることで、五感が刺激される。
- 達成感や喜びを感じることができ、自己肯定感が高まる。
- 適度な運動になり、身体機能の維持に役立つ。
- デメリット:
- 天候に左右される。
- 体力的な負担がある場合がある。
- 植物が枯れてしまうと、落胆してしまう可能性がある。
- 施設側の協力が必要。
具体的な提案:
- 施設の庭の一角に、お母様用の小さなスペースを設ける。
- 育てやすいハーブや野菜、花などを選ぶ。
- スタッフと一緒に、水やりや草むしりをする。
- 収穫した野菜やハーブを、食事に使用する。
2.2. 家事のお手伝い
お母様が以前、家事をされていたとのことですので、できる範囲で家事のお手伝いをしてもらうことも良いでしょう。洗濯物を畳んだり、食器を拭いたり、テーブルを拭いたりするなどの簡単な作業から始めることができます。
- メリット:
- 昔の経験を活かすことができ、自己肯定感が高まる。
- 他の入居者やスタッフとのコミュニケーションの機会になる。
- 身体を動かすことで、適度な運動になる。
- 達成感や役割意識を持つことができる。
- デメリット:
- 安全面に配慮する必要がある。
- 集中力が続かない場合がある。
- うまくできないと、落ち込んでしまう可能性がある。
具体的な提案:
- 洗濯物を畳む際は、畳みやすいように工夫する（大きめの洗濯物から始める、畳む手順をわかりやすく表示するなど）。
- 食器を拭く際は、割れにくい食器を使用する。
- スタッフがそばで見守り、必要に応じてサポートする。
- できたことに対して、積極的に感謝の言葉を伝える。
2.3. 回想法
回想法は、過去の出来事について語り合うことで、記憶を呼び起こし、自己肯定感を高める効果があります。写真や昔の品物を見せながら、思い出話をしたり、音楽を聴いたりすることで、脳を活性化させることができます。
- メリット:
- 昔の記憶を呼び起こし、脳を活性化させる。
- 自己肯定感が高まり、精神的な安定に繋がる。
- 他の入居者やスタッフとのコミュニケーションの機会になる。
- 感情表現を促し、心のケアに繋がる。
- デメリット:
- 過去の辛い記憶が蘇ってしまう可能性がある。
- 参加を拒否する入居者もいる。
- 専門的な知識が必要となる場合がある。
具体的な提案:
- お母様の写真や思い出の品物を用意する。
- 昔の音楽を聴いたり、映像を見たりする。
- グループで、テーマを決めて思い出話を語り合う。
- スタッフが進行役となり、参加者をサポートする。
2.4. 手作業
手作業は、指先を使うことで脳を活性化させ、集中力を高める効果があります。簡単なパズルや塗り絵、編み物（安全な範囲で）など、様々な手作業を試すことができます。
- メリット:
- 指先を使うことで、脳を活性化させる。
- 集中力を高め、達成感を得られる。
- 創造性を刺激し、表現力を豊かにする。
- 身体機能の維持に役立つ。
- デメリット:
- 安全面に配慮する必要がある（ハサミや針など、危険な道具は使用しない）。
- 集中力が続かない場合がある。
- 完成までに時間がかかる場合がある。
具体的な提案:
- 大きめのパズルや、シンプルな塗り絵などから始める。
- 安全な素材（毛糸など）を使った、簡単な編み物や手芸を試す。
- スタッフがそばで見守り、必要に応じてサポートする。
- できた作品を、飾ったり、他の入居者に見せたりする。
2.5. コミュニケーション活動
他の入居者やスタッフとのコミュニケーションは、社会的なつながりを維持し、孤独感を軽減するために重要です。レクリエーションに参加したり、食事を一緒にしたり、会話をしたりすることで、交流を深めることができます。
- メリット:
- 社会的なつながりを維持し、孤独感を軽減する。
- 認知機能の維持・改善に役立つ。
- 精神的な安定をもたらす。
- 生活の質を向上させる。
- デメリット:
- コミュニケーションが苦手な場合は、負担になる可能性がある。
- 人間関係のトラブルが発生する可能性がある。
- 参加を拒否する入居者もいる。
具体的な提案:
- お母様の興味のあるレクリエーションに参加する（音楽鑑賞、体操など）。
- 食事を一緒にし、会話を楽しむ。
- 他の入居者と、共通の話題を見つける。
- スタッフが、コミュニケーションを促すサポートをする。
3. 施設との連携と工夫
お母様が施設で「できること」を見つけ、活き活きとした生活を送るためには、施設との連携が不可欠です。施設側の理解と協力が得られれば、様々な活動をスムーズに進めることができます。
3.1. 施設とのコミュニケーション
定期的に施設とコミュニケーションを取り、お母様の状況や希望を伝えることが重要です。面談や連絡ノートなどを活用し、情報共有を密にしましょう。スタッフの方々との信頼関係を築くことも大切です。
3.2. 個別ケアプランの作成
お母様の個別ケアプランを作成し、活動内容を盛り込みましょう。ケアプランは、お母様の状態や希望、目標などを踏まえて作成されます。施設と協力し、お母様に合った活動を計画しましょう。
3.3. 環境整備
お母様が活動しやすいように、環境を整えることも重要です。例えば、園芸活動をする場合は、庭の整備や道具の準備が必要です。家事のお手伝いをする場合は、安全な環境を確保し、必要な道具を用意しましょう。
3.4. 家族のサポート
ご家族は、お母様の活動を積極的にサポートしましょう。一緒に活動に参加したり、励ましの言葉をかけたりすることで、お母様のモチベーションを高めることができます。また、困ったことがあれば、施設や専門家に相談しましょう。
4. 成功事例と専門家の視点
実際に、認知症の高齢者が施設で「できること」を見つけ、生活の質を向上させた成功事例を紹介します。また、専門家の視点から、活動のポイントや注意点について解説します。
4.1. 成功事例1：園芸活動による変化
ある介護施設では、認知症の入居者の方々に園芸活動をしてもらったところ、最初は無気力だった方が、土を触り、植物の世話をすることで、表情が明るくなり、他の入居者との会話が増えました。また、収穫した野菜を一緒に調理することで、達成感と喜びを感じ、生活に活気が生まれました。
4.2. 成功事例2：家事のお手伝いによる変化
別の介護施設では、認知症の入居者の方々に、洗濯物を畳んだり、食器を拭いたりする家事のお手伝いをしてもらったところ、自分の役割を認識し、他の入居者やスタッフとのコミュニケーションが増えました。また、手伝うことで、身体機能の維持にも繋がり、自立した生活を送るための意欲が高まりました。
4.3. 専門家の視点
介護福祉士のAさんは、「認知症の高齢者が、施設で活き活きと過ごすためには、本人の意思を尊重し、できることを見つけることが重要です。無理強いせず、本人のペースに合わせて、様々な活動を試してみることが大切です。また、家族や施設のスタッフが連携し、サポート体制を整えることが、成功の鍵となります。」と話しています。
精神科医のBさんは、「認知症の高齢者は、自己肯定感が低下しやすいため、成功体験を積み重ねることが重要です。小さなことでも良いので、できたことを褒め、自信を持たせることが大切です。また、過去の記憶を呼び起こし、回想することで、心のケアにも繋がります。」と話しています。
5. まとめ：認知症の高齢者が施設で「できること」を見つけるために
認知症の高齢者が介護施設で「できること」を見つけ、生活の質を向上させるためには、以下の点が重要です。
- 本人の意思を尊重し、できることを探す。
- 様々な活動を試してみる。
- 施設との連携を密にする。
- 家族のサポート体制を整える。
- 成功体験を積み重ね、自己肯定感を高める。
お母様の状況に合わせて、様々な活動を試し、施設との連携を深めながら、お母様が活き活きとした生活を送れるようにサポートしていきましょう。認知症であっても、諦めずに、できることを見つけ、その喜びを分かち合うことが、何よりも大切です。
この記事が、少しでもお役に立てれば幸いです。ご家族の皆様が、笑顔で過ごせる日々を願っています。
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