介護職の急変時対応:記録の取り方と冷静な判断で命を守る
介護職の急変時対応:記録の取り方と冷静な判断で命を守る
介護職として、利用者様の急変時に迅速かつ正確な対応を行うことは、生命の維持に直結する非常に重要な業務です。バイタルサイン(脈拍、呼吸数、血圧、体温、SpO2)や意識レベルの記録は必須ですが、それ以外にも確認すべき点が多くあります。本記事では、介護職の急変時対応における記録の取り方と、冷静な判断で命を守るための具体的なステップを、豊富な事例を交えながら解説します。
1.急変時の初期対応:まず落ち着いて状況把握
利用者様の急変に遭遇した際、まず重要なのはパニックにならないことです。慌てず、落ち着いて以下の手順で対応しましょう。
- 状況の確認:何が起きたのか、いつからその状態なのか、利用者様の訴えは何かを正確に把握します。周囲の状況も確認し、危険がないかを確認しましょう。
- 緊急事態の宣言:施設内にある緊急呼び出しシステムを使用し、状況を正確に報告します。チーム医療の観点から、医師や看護師への迅速な連絡が不可欠です。
- バイタルサインの測定:脈拍、呼吸数、血圧、体温、SpO2を正確に測定し、記録します。変化があれば、その時間と状況を詳細に記録しましょう。心電図モニターがあれば、心拍リズムも確認します。
- 意識レベルの確認:意識レベルは、Glasgow Coma Scale(GCS)を用いて評価します。GCSスコア、瞳孔径、対光反射などを記録します。意識障害の程度を正確に把握することは、後の治療方針に大きく影響します。
2.記録すべき項目:バイタルサイン以外に重要なポイント
バイタルサインと意識レベルに加え、以下の項目についても記録することが重要です。
- 症状の詳細:胸痛、呼吸困難、意識消失、けいれん、嘔吐、発熱など、具体的な症状を詳細に記録します。症状の開始時間、持続時間、程度なども記録しましょう。例えば、「胸痛:胸部圧迫感、開始時間10:00、持続時間15分、程度:中等度」のように具体的に記述します。
- 既往歴:利用者様の既往歴(高血圧、糖尿病、心臓病など)を把握し、急変との関連性を考慮します。薬剤服用状況も記録します。
- 直近の状況:急変直前の行動、食事、排泄、薬剤の服用状況などを記録します。これらは、急変の原因を特定する上で重要な手がかりとなります。
- 実施した処置:酸素投与、体位変換、心肺蘇生法(CPR)など、実施した処置の内容と時間を記録します。処置の効果についても記録しましょう。
- 家族への連絡:家族への連絡状況、連絡時間、家族の反応などを記録します。緊急連絡先を事前に確認しておくことが重要です。
- 医師の指示:医師からの指示内容、指示時間、指示内容への対応などを記録します。医師の指示に基づいた対応が重要です。
3.ケーススタディ:具体的な事例から学ぶ
80歳女性、認知症を患うAさん。夕食後、突然意識を失い、呼吸が浅くなりました。介護職員Bさんは、落ち着いて緊急呼び出しを行い、バイタルサインを測定。脈拍は弱く、呼吸数は減少していました。意識レベルはGCS3点。直ちに酸素マスクを装着し、体位変換を行い、医師に連絡しました。医師の指示に従い、救急車を要請。記録には、症状の開始時間、バイタルサインの変化、実施した処置、医師の指示、救急隊到着時間などを詳細に記録しました。Aさんは搬送先の病院で適切な治療を受け、一命を取り留めました。このケースでは、Bさんの迅速かつ正確な対応と詳細な記録が、Aさんの救命に大きく貢献しました。
4.チェックリスト:急変時対応の確認事項
- 緊急呼び出しシステムの使用
- バイタルサイン(脈拍、呼吸数、血圧、体温、SpO2)の測定と記録
- 意識レベル(GCS)の評価と記録
- 症状の詳細な記録(開始時間、持続時間、程度など)
- 既往歴と薬剤服用状況の確認
- 直近の状況(食事、排泄、行動など)の記録
- 実施した処置の記録(時間、内容、効果など)
- 家族への連絡状況の記録
- 医師の指示内容と対応の記録
5.まとめ:記録は命を守る第一歩
介護職における急変時対応は、迅速性と正確性が求められます。バイタルサインや意識レベルだけでなく、症状の詳細、既往歴、実施した処置などを詳細に記録することは、適切な医療処置を行う上で不可欠です。記録は、利用者様の命を守るための第一歩であり、チーム医療を円滑に進めるための重要な要素です。日頃から、急変時対応マニュアルを確認し、訓練を行うことで、冷静な判断と迅速な行動が可能になります。
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